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仙台高等裁判所 昭和26年(う)816号 判決

控訴人 被告人 村井良三 弁護人 逸見惣作

原審検察官 若林虎之助

検察官 馬屋原成男関与

主文

本件控訴はいずれも之を棄却する。

理由

検察官若林虎之助の控訴趣意、弁護人逸見惣作の控訴趣意並びに同人陳述した被告人名義の控訴趣意は別紙記載のとおりである。

弁護人の控訴趣意について

しかしながら記録を調査すると証第一号乃至第六号はいずれも渡辺福太郎から押収されたものであることは、原審第一回公判調書の記載により明かであり、また証第七号(一九五一年一月二十日附日本共産党盛岡地区委員会名義の「もう少しだ、頑ばれ」と題するちらし一葉)及証第八号(一九五〇年四月二十五日附アカハタ一葉)は、いずれも原審第四回公判において検察官から証拠として取調べの請求があつたもので、弁護人は之に対し右証第七号が日本共産党盛岡地区委員会名義のちらしであること及証第八号が日本共産党の機関紙アカハタであることに関し別段争つた形跡もなく、之が証拠調を為すことに何等異議がなかつたことは明らかである。されば証拠として提出されたものの成立につき争なき以上証第七、八号のごときは一般に頒布されがちのものであるから検察官が如何にして之を入手したかの点について特に調査するの必要はない。従つて右証拠のうち証第一号及証第七号を罪証に引用した原判決は洵に相当で所論のごとき採証の法則に違反した違法はない、論旨は理由がない。

被告人名義の控訴趣意二について

共産党機関紙「アカハタ」及其の後継紙並びに同類紙の発行停止処分が昭和二十五年六月二十六日附及び同年七月十八日附連合国最高司令官の指令に基くものであること及び「平和のこえ」紙が右「アカハタ」の後継紙として発行停止処分されたことは、原判決挙示の各官報号外抄本並びに法務府特別審査局長より盛岡地方検察庁検事正宛の日本共産党機関紙アカハタ後継紙発行停止処分に関する件回答書謄本により明白である。しかして「右平和のこえ」紙が「アカハタ」の後継紙であると認定し其の発行停止を命ずる最終的な権限は連合国最高司令官に属し日本裁判所に存しないと認むべきである。何となればわが国が「ポツダム」宣言を受諾し降伏文書の調印により、わが国の国家統治機関は勿論、司法裁判所の権能が連合国最高司令官の制限下におかれている現状にあつては同司令官の指令は当然わが国の司法裁判所を拘束するものであると解すべきが至当であるからである。従つて此の点につき何等の判断を示さなかつた原判決は相当で何等の違法はない。所論は独自の見解に基く主張であつて採用に値しない。論旨は理由がない。

同上四について

所論は被告人は「平和のこえ」紙が「アカハタ」の後継紙であることを認識していなかつたと主張するのであるが、原審第四回公判調書中証人高橋敏哉の供述記載によれば、被告人は「平和のこえ」紙が「アカハタ」の後継紙であることを十分認識していたことが認められる、その他記録を精査するも原判決には事実誤認を疑うに足る事由はない。論旨は理由がない。

同上一、三について

苟も前段の説示事実を認識し、宣伝、播布を目的として一般人に普及する為にする一切の行為が、いわゆる発行行為に含まれるものと解すべきであつて被告人が「アカハタ」の後継紙である「平和のこえ」紙を原判示記載の者等に配付頒布したことは原審第二回公判調書中証人渡辺福太郎、同工藤勇、同阿部弘、同工藤勇一、同佐藤一雄の各供述記載により明白であるから被告人の右所為は明かに連合国最高司令官の日本国政府に対する指令の趣旨に反する行為にして占領目的に有害な行為と認むべきものである。従つて原判決には所論のような法令の解釈を誤り事実を認定した違法は毫も存しない。論旨は理由がない。

同上五について

「平和のこえ」紙が「アカハタ」の後継紙であるとの最終決定は連合国最高司令官の権限に属し、日本の裁判所に之を審査する権能のないことは前段説明のとおりであるから前顕官報号外抄本並びに特審局長の回答書謄本等により苟も「平和のこえ」紙が「アカハタ」の後継紙と認定されたことやその発行を停止する旨連合国最高司令官の指令のあつた事実を認定した以上証拠説明としては十分であると認める。原判決には所論のような違法は毫も存しない。論旨は理由がない。

同上六について

その内容自体被告人の独断に帰し適法な控訴理由として判断を与うべき事項に属しないものと認めるので採用しない。

検察官の控訴趣意について

記録を精査し、所論の事情を参酌し被告人の犯情、経歴、年齢、生立、身分関係その他諸般の情状を総合して考察するに原審の被告人に対する科刑は洵に相当にして量刑不当であるとは認めることはできない、論旨は理由がない。

よつて刑事訴訟法第三百九十六条に従い、各控訴を棄却すべきものとし主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大野正太郎 裁判官 松村美佐男 裁判官 蓮見重治)

検察官若林虎之助の控訴趣意

原審に於て起訴状記載の公訴事実中「平和のこえ」紙の頒布部数約二十五部を約二十三部と認定した外凡て起訴状記載の通り認定しながら之に対し懲役一年六月の言渡を為したるは刑寛に失し不当である。依つて貴裁判所に於て左記事由を御審理の上原判決を破毀せられ度い。

第一、本件は連合国最高司令官の指令に直接反抗する占領目的阻害行為である。言論出版の自由はもとより憲法の保障するところにして濫りに之を侵害してはならないことは言うまでもないがそうかと言つて絶対無制限に其の自由が認めらるべきものでもない。此の事は国内法によつても既に名誉毀損罪、猥セツ文書頒布罪等の刑法の規定により制限されていることによつても明らかである。殊に占領政策遂行の為に発せられる連合国最高司令官の指令に対しては占領下の我国民は忠実に之に従う義務のあることは当然である。従つて連合国最高司令官の指令によつて言論出版の自由が制限されることは又已むを得ない。

昭和二十五年一月日本共産党がコミンフオルムの批判を受け容れて国際プロレタリアートの一環たるべき態度を明らかにして以来占領政策に対する悪意に満ちた露骨な批判が活溌となり次いで朝鮮動乱の勃発するに及んで益々米国又は占領軍に対する誹謗、悪宣伝等虚偽又は破壊的批判に亘る言動が激化して来た。斯の如き情勢下に於て昭和二十五年六月二十五日附及び同年七月十八日附連合国最高司令官の指令により日本共産党機関紙「アカハタ」及其の後継紙同類紙が無期限に発行を停止されたのである。其の実質的理由は右指令たるマ書簡によつて明らかにされて居るから茲に詳評するまでもない。此の日本共産党機関紙「アカハタ」の後継紙である「平和のこえ」紙を頒布して其の発行々為を為した被告人の所為は即ち右指令を真向から無視たし直接露骨な反抗行為である。

第二、本件は日本共産党の機関紙活動の一環としてなされた組織的計画的な所為である。即ち従来の言論事犯(一九四五年九月十日附連合国最高司令官の発した「言論及新聞の自由に関する」覚書違反等)は多くは一地域的な且一時的思いつきによる小規模のものであつたが本件は既に証拠として提出されている法務府特別審査局長の「日本共産党機関紙「アカハタ」後継紙発行停止処分に関する回答書」によつても明らかな如く日本共産党の機関紙活動の一環として全国的規模に於て組織的且周到な計画の下に為されたもので而も「アカハタ」発禁後発行された一連の後継紙が次々と発刊停止処分になつたにも拘わらず執拗に抵抗し続けて来たものである。此の点他の一般言論事犯に比較し特に悪質重大と云わなければならぬ。

第三、被告人は日本共産党岩手県盛岡地区委員長として本「平和のこえ」紙頒布に際しても常に指導的役割を演じ積極的に活動したものである即ち被告人が日本共産党盛岡地区委員長の地位にあつたことは証拠として提出した被告人に係る団体等規正令による届出書の謄本によつて明かである。尚証人高橋敏哉、同渡辺福太郎、同工藤勇、同阿部弘、同工藤勇一、同佐藤一雄等の各証言によれば被告人は定職なく殆ど職業党員として山間僻地まで跋渉し本件「平和のこえ」紙の頒布に努めた事実が認められ、特に高橋敏哉証人の証言によれば被告人は「平和のこえ」紙を頒布するに当り自らアカハタの後継紙なることを言明して居る。即ち被告人は「平和のこえ」紙の頒布に際しその行為が連合国最高司令官の指令に反することを悉知しながら敢えて為して居る。ことが明らかであつて、其の積極的能動的なる点が特に指摘されなければならない。

第四、被告人の頒布した「平和のこえ」紙の量は公訴事実(原審犯罪事実)に現われたところよりは遙かに多いと推断される。即ち公訴事実に掲示されたところのみよりすれば被告人の頒布した「平和のこえ」紙は必ずしも多量とは言えないが前記の如く被告人の党に於ける地位及び其の活動状況よりしてそれのかに止まらない事が容易に推認されるのみではなく証人高橋秀雄の証言及び証第七号の「もう少しだ頑ばれ」と題するチラシの「平和のこえは全部売れた云々」の記載、而して右チラシの作成名義が日本共産党盛岡地区委員会と記載されて居る事実等により少くとも盛岡地区委員長たる被告人の直接又は間接な指示或は煽動による「平和のこえ」紙の頒布の量は相当多量なることは推認するに難くない。

第五、本件行為後の被告人の言動によるも酌量すべき余地がない。即ち被告人は原審公判廷に於ける態度及び其の供述によつても明らかな如く本件行為を自己の偏見と独断により飽迄正当なるものと断じ何等改むる色なきのみならず原審公判の冒頭起訴事実に対する陳述に際し裁判長の発言制限をも無視して「……更に米国は台湾に朝鮮に或は軍隊を派遣しかえつて全面講和、民族の独立を要望するソ連、中国に対し陰謀をもつて国連に於て侵略者の決議をなし……」(記録十七丁の十一行より十四行)等連合国たる米国に対し虚偽又は破壞的批判に亘る虞れのある言辞を弄して益々連合国最高司令官を無視し之に反抗する態度を露骨にし更には原審公判記録を通覧すれば了知し得る如く被告人の公判廷に於ける態度はやゝもすれば裁判長の訴訟指揮権をも無視し不必要に裁判長検察官を罵倒怒号する等勝手な言動を終始した。被告人は今後も猶一層の過激さを以て法令を無視し秩序を破壊する行動に出ずることが容易に看取されるところである。即ちその情状や重く酌量すべき何等の余地もない。

以上客観的資料に基いて論証した諸点により明らかな如く被告人の本件所為は正に悪質重大と云うべくこれに対する原審判決は刑軽きに失し破毀さるべきものと信ずる。

弁護人逸見惣作の控訴趣意

原判決は証拠調に違法がある。即ち検察官は原審第二回公判において「平和のこえ」十五部「盛岡通信」三部「党活動指針」五部「盛岡通信」九部「われらの世界」五部「地区ニユース」七部の証拠調を請求し又第四回公判において一九五一年一月二十日附日本共産党盛岡地区委員会名儀の「もう少しだ頑張れ」と題する謄写版刷の「チラシ」一葉一九五〇年四月二十日附「アカハタ」一葉第一回公判において提出済の証第一号証の一九五一年一月五日附「平和のこえ」の証拠調を請求し弁護人及び被告人は右の証拠調について異議がない旨を陳述し裁判官は右の証拠調をすることを決定し証拠調をすることを決定し証拠調をしたのであるが右の各証拠物は何れも検察官の提出に係るところ検察官がどうしてこれを入手したか本件記録上全然不明であるから如何なる理によつてこれが本件の証拠となるかこれを理解すること不可能である。併も証人阿部弘、同佐藤一雄は右証拠物の内「平和のこえ」を示され何れも右証人の提出したものと違う旨の証言をして居るのであるから益々証拠物の出所について疑惑を持たれるのである。このような出所不明な証拠物を取調べこれを断罪の資料とすること許されないと解すべきであるは勿論であるから原判決は破毀すべきである。

被告人村井良三の控訴趣意

一、連合国の日本占領政策の基本は一九四五年七月二十六日に発せられ、日本国で無条件受諾したポツダム宣言にあることは今更言うまでもない。然しながら此のポツダム宣言も、一九四五年六月二十六日米国サンフランシスコ市に於て開催された国際連合総会で採択された″国際連合憲章″制定の精神に基づき発せられたものである。国際連合は近代文明の破壊者、非人道的なフアツシヨ政治を憎み、高貴なるヒユーマニズムに立脚する世界民主々義国家群の連合であり、それ故に国際連合憲章も又、窮局するところ″世界平和維持″の機構たるべきは当然でありこのことこそが国際連合本来の性格、任務であると言わなければならない。即ち、その前文に、吾ら連合国の各人民は、吾らの生涯において再度まで人類に名状すべからざる悲哀を齎せる戦争の惨禍より、次代を救い基本的人権、人身の尊重と価値及び大小各国の同権に関する信念を再確認し、正義と条約及び他の国際法上の源泉より生ずる義務の尊重とが維持せられ得るが如き状態を確立し、且つ社会的進歩及び一層大なる自由のもとに於て一層よき生活基準を促進し並に右目的のため寛容を実行して善良なる隣人として互に平和に共同に生活し、国際平和及び安全を維持するため吾らの力を結合し、原則の受諾及び方法の設定により共同の利益を除くのほか、武装軍隊が使用せられることなかるべきことを確保し且つ一切の人民の経済的及び社会的進歩のための国際的機構を使用することに決し、右目的を成就せんがため吾らの努力を結合することに決意せりと宣言していることは国際連合本来の任務として平和維持戦争防止、人類の経済的社会的福祉、民族自決、各民族間の平等と同権、基本的人権の尊重と維持を原則としていることの明かな証拠である。従て、ポツダム宣言も、この基本原則を継承発展せしめていることは当然であつて、この原則に立つて日本の占領政策が執行せられ、且又日本国憲法その他の法令も、この根本的精神の発展に外ならないのである。

ポツダム宣言第五に、吾らは左の条件より逸脱することなかるべし、之に代る条件存在せず。とうたつていることは本宣言の尊厳と唯一性を現わし、日本に施行せられる占領政策がすべてポツダム宣言によつて行われ決して逸脱してはならないことを表明しているのである。同宣言第六、無責任なる軍国主義の駆逐及びこれら勢力の除去――を規定し第十、日本国民の民主々義的傾向の復活、強化、言論宗教思想の自由、基本的人権の尊重――を確認第十一、日本国をして戦争のため再軍備を為すことを得しむるが如き産業の禁止第十二、前記諸項目が達成せられ、且日本国民の自由に表明する意志に従い平和的傾向を有し、且責任ある政府が樹立せられるにおいては、連合国占領軍はたゞちに徹収せらるべくと宣言していることから考察しても、このことは一貫して日本を平和的、民主的近代国家として再建せしめようと意図しているのである。以上から思料するとき、被告人の言動が国際連合憲章、ポツダム宣言のいかなる条文にも牴触するものではなく、却て連合国憲章、ポ宣言を完全に履行し、平和と独立の日本を建設せんとして行動して来たものである。即ち、被告人は一、戦争反対、世界平和の擁護 一、日本の再軍備反対 一、日本の植民地的奴隷生活反対 一、全面講和と日本の完全独立 一、講和後全占領軍の速かなる徹退 を実現するために運動して来たのである。これこそが日本国民の心からの願いであることは説明を要しないであろう。あるいは占領当局、政府当局は、ポツダム宣言の受諾せられた当時の国際的情勢と現在の情勢は根本的に相違する。と主張するかも知れない。然し日本国民はポツダム宣言を無条件受諾したゞけであり、その余のことは何ら関知しないところである。現在の如く公然と再軍備が実現せられ、日本国民の意思に反して朝鮮侵略の軍事基地となりつゝあることがら考察するならばかゝる行動は、国際連合憲章の諸原則ポツダム宣言の各条項を蹂躪すると同時に、国際的信義を破り、連合国の意志を自ら否定する非合法的、背信的行動と言わざるを得ないのである。かゝる非合法的、非道義的行為に対しては、日本国民の負うべき義務は存在しない。従て被告人に対する判決は無罪である。

二、「平和のこえ」紙は、日本共産党の機関紙「アカハタ」の後継紙ではない。

イ、「平和のこえ」紙昭和二六、一、五付第四号「社説」中、日本共産党と何らの関係のないことの主張及び民主的新聞の重要性の主張 ロ、同号一面記事中「ポツダム宣言を守ることと題する――吉河特審局長、日本共産党中央臨時指導部椎野議長、風早代義士と「機関紙」に関する応答。ハ、本件証人日本共産党岩手県委員会委員長柳舘与吉の証言及び被告人の公判廷における供述によつても「平和のこえ」紙は日本共産党と何らの関係もなく後継紙たらざること、且つ ニ、法務府特審局長作成名義の「日本共産党機関紙「アカハタ」及び後継紙発行停止処分に関する回答」と題する盛岡地方検察庁検事正宛の回答書の内容から検討してもそれは政府当局の独断的推断に過ぎず、たんに言いがかりをつけているに過ぎないものである。判決は発行停止の行政処分を唯一絶対のものとしているが、これは明かに行政に対する司法権の隷従を意味するものであり官僚的フアツシヨ政治の現われと言わざるを得ないのである。尚後継紙は、一つの新聞に限らるべきものであり、これを無制限に延長さるべきでないことは言うを俟たないであろう。

三、発行行為の解釈と適用は違法である。編輯、発行、印刷、運搬、頒布、集金をすべて発行々為の中に包含して解釈し適用することは現在の法律用語の一般的解釈を逸脱する独断的拡充解釈であつて、いやおうなく発行々為にこじつけた前代未聞の不法事である。

四、被告人は「平和のこえ」紙が「アカハタ」の後継紙たるの認識をもつていない。イ、被告人の公判廷における供述、ロ、証人柳舘与吉の証言によつて明かに証明される。

五、本件は国内法による国内裁判である。一九四五、九、二七付「新聞及言論の自由えの追加措置に関する覚書」によつて過去の言論、出版の弾圧諸法令が徹廃せられ一九四五、一〇、四付「政治的民主的及宗教的自由に対する制限の徹廃に関する覚書」によつて治安維持法等結社、集会の自由が保障せられたのであるから、出版関係における本件の如きは憲法の定むるところによつて審理さるべきであり、憲法以外の拘束を受くべきではない。昭和二五、六、二六、同七、一八付マツカーサー司令官の指令も法制化されてこそ民主国の要件であるに拘らず、法令によらずして、たんなる一片の指令乃至指令の趣旨によつてすべてを律することは憲法違反である。吉田内閣は終始一貫内外独占資本の精神的、政治的支柱として日本人民を弾圧し、戦争挑発者の忠実なる番犬として日本の奴隷化につとめ、憲法を蹂躪している。

六、以上綜合する場合、本件は法律上と言うよりは政治的弾圧と言わなければならない。自由と民主々義の仮面の下に日本を植民地化し、再軍備を押付け、日本をアジヤ侵略の基地とし、新たな世界支配を企図ウオール街の陰謀が、平和運動の最先頭に立つ日本共産党に対する暴逆な弾圧となつて現われ、それ故にこそ本件は、平和を希求する日本国民に対する暴圧である。単独講和を押付け、その批准を前にして日本共産党の非合法を策しつゝある陰謀の一環として現われているのである。電燈料値上げを中核とする高物価政策、重税強権供出、低米価低質金政策等一切の収奪と重圧政策は、国際帝国主義者の正体をいかんなく暴露している。この道は日本国民の奴隷化の道であり、戦争えの道である。今や平和を求め、再軍備に反対し、全面講和と日本の完全独立を希う声が、全日本の隅々から上りつゝある。又平和を愛する世界の人民勢力は日々拡大し、内外独占資本を支持する勢力は弧立化しつゝある。国民の意志に反する戦争政策は、決して成功せず必ずや敗北するであろう。被告人は世界平和と日本の完全独立をあくまで希求するが故に以上の趣旨にもとずき無罪を主張するものである。

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